FX初心者向けガイド VPSの選び方
MT4(MetaTrader 4)で自動売買を行う際、EA(Expert Advisor)を24時間365日、安定して稼働させ続けるためには、専用のVPS(仮想専用サーバー)が不可欠です。VPSは、あなたの代わりに取引を続ける「もう一人の優秀なトレーダー」が働く場所だとイメージしてください。
VPSの性能が不足していると、チャートのフリーズ、約定の遅延、EAの一時停止といった問題が発生し、思わぬ損失につながる可能性があります。特に市場が急変した際に処理が間に合わず、大きなスリッページやマージンコール(追証発生の可能性)のリスクを負うことになりかねません。
ここでは、MT4 EAのために最適なVPSを選ぶための重要な4つの観点に加え、自動売買の成否に直結する「ネットワーク遅延」の観点を含めた5つのポイントと、必要なリソースの目安を徹底解説します。
1. VPSの稼働率(アップタイム)とサポート体制
自動売買において、稼働率(アップタイム)は最も重要視すべき項目の一つです。稼働率は、VPSがシステムメンテナンスや予期せぬトラブルで停止することなく、正常に動作し続けた時間の割合を示します。
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稼働率 |
年間停止時間(目安) |
影響度と推奨度 |
|---|---|---|
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99.99% |
年間約52分 |
最上級。プロレベルの信頼性。重要な取引を逃すリスクが極めて低い。 |
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99.9% |
年間約8時間45分 |
標準的。許容範囲だが、重要な局面での停止リスクあり。 |
稼働率の重要性とプロバイダー選びの視点
稼働率99.9%と99.99%の差は、一見わずかですが、年間で見てみると停止時間に約8時間もの差が出ます。EAは市場が開いている間、常に動作している必要があります。もし重要な経済指標の発表時やトレンドが発生している瞬間にVPSが停止してしまえば、決済が実行されず大きな損失を被る可能性があります。
高い稼働率を保証できるVPS業者は、一般的に冗長化(二重化)されたシステムや、障害を未然に防ぐための予防的なメンテナンスを徹底しています。そのため、VPS業者を選ぶ際は、最低でも稼働率99.9%以上、可能であれば99.99%以上の保証をしているプロバイダーを選ぶことを強く推奨します。
緊急時のサポート体制も確認
予期せぬトラブルが発生した場合、サーバーを早期に復旧させるためには、プロバイダーのサポートが欠かせません。24時間365日体制で、迅速に日本語で対応してくれるサポート窓口があるかどうかも、稼働率と同じくらい重要なチェックポイントです。
2. CPUのコア数:MT4の処理能力を左右する要
CPU(Central Processing Unit)は、EAの計算処理やチャート描画、インジケーターの動作など、MT4のすべての処理速度に直結する脳にあたります。
MT4は基本的にシングルコア(1つのコア)での処理が主です。つまり、MT4自体は高性能なCPUを搭載していても、そのうち1つのコアの性能しか最大限に引き出せません。しかし、複数のMT4を同時に動かす場合は、それぞれのMT4が処理を行うためにコアが必要になるため、コアの総数が重要になります。
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項目 |
推奨目安(MT4の稼働数あたり) |
|---|---|
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CPUコア数 |
MT4の稼働数2〜3つあたり1コア |
負荷に応じたコア数の考え方
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EAがシンプルな場合(低負荷): 通貨ペアやインジケーターが少なく、計算量が少ないEAであれば、1コアで4〜5つのMT4を動かせる場合もあります。
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EAが複雑な場合(高負荷): マーチンゲール系、グリッドトレード系、または大量のカスタムインジケーターを使用するEAは、瞬時の計算処理が多いため、MT4の稼働数1〜2つあたり1コアを割り当てるのが理想的です。
-
一般的な目安: MT4を4つ稼働させる場合、最低でも2コア以上、安定性を重視するなら4コア以上あると、MT4の起動やその他のOS操作も快適に行えます。
仮想コアと物理コア
VPSで提供されるCPUの多くは、物理コアを仮想的に分割した「仮想コア(vCPU)」です。VPS業者を選ぶ際は、単にコア数が多いだけでなく、その仮想コアの基盤となっている物理CPUの性能(クロック周波数など)も確認できると、より安心です。
3. メモリ(RAM):安定性と快適性の鍵
メモリ(RAM)は、MT4およびWindows OSが作業を行うための「机の広さ」です。メモリが不足すると、OSやMT4がストレージ(HDD/SSD)の一部を代わりに使用するようになり(スワップまたはページング)、処理速度が大幅に低下し、フリーズやエラーの原因となります。
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項目 |
推奨目安(MT4の稼働数あたり) |
|---|---|
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メモリ(RAM) |
MT4の稼働数1つあたり512MB〜1GB |
MT4 1つあたり約512MB〜1GBのメモリを消費します。これに加えて、Windows OS自体の動作に必要なメモリ(約1GB〜1.5GB)を考慮する必要があります。
例えば、MT4を4つ稼働させる場合の必要メモリ容量の計算例です。
したがって、MT4を4つ動かす場合は4GB〜6GB程度のメモリを搭載したプランを選ぶと、OS操作も含めて快適に動作します。
メモリを節約するコツ
-
不要なチャートは閉じる: MT4はチャートを開いているだけでメモリを消費します。EAを稼働させていない通貨ペアのチャートは閉じておきましょう。
-
バックテスト中は他のMT4を停止: 大量のヒストリカルデータを使うバックテスト中は、一時的に他のMT4の稼働を停止させると、メモリ不足によるフリーズを防げます。
4. ストレージ(容量と速度):高速なSSDが必須
ストレージは、OSやMT4プログラム、過去のチャートデータなどを保存する場所です。特に重要なのは速度と容量の2点です。
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項目 |
推奨目安(MT4の稼働数あたり) |
|---|---|
|
ストレージの種類 |
SSD (絶対必須) |
|
追加容量 |
MT4の稼働数1つあたり1〜2GB |
速度:SSD(ソリッドステートドライブ)が絶対条件
MT4が過去のチャートデータを読み込む際の速度や、EAが頻繁にログファイルを書き込む際の処理速度、そしてOS全体のレスポンスに影響するため、従来のHDD(ハードディスクドライブ)ではなく、高速なSSDを搭載したVPSを選ぶことが絶対条件です。特にバックテストを頻繁に行うトレーダーにとって、SSDのI/O性能は時間の節約に直結します。
容量:初期容量とバックアップの考慮
Windows OSと基本ソフトだけで約10GB〜15GB程度の容量が必要です。
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稼働MT4数 |
総容量目安 |
|---|---|
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1〜2稼働数 |
20GB〜30GB |
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3〜5稼働数 |
30GB〜50GB |
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5稼働数以上 |
50GB〜100GB |
MT4のデータは、稼働期間が長くなるほど、また通貨ペアを多く開くほど増加します。長期間安定して稼働させるためにも、最低でも20GB以上のSSD容量があるプランから選び始め、将来的にMT4の数を増やす予定があるなら、容量に余裕を持たせましょう。
5. ネットワーク遅延(レイテンシ):約定のスピードを決める要素
MT4の安定稼働に直接関わる4つの要素に加え、約定スピードに直結するのがネットワーク遅延(レイテンシ)です。
レイテンシとは、VPSとFXブローカーのサーバー間でデータが往復するのにかかる時間(通信遅延)を指します。レイテンシが低いほど、MT4が出した注文がブローカーのサーバーに届くのが速くなり、より狙った価格で約定しやすくなります。
スキャルピングEAには特に重要
特にスキャルピングや高速取引を行うEAの場合、数ミリ秒の遅延が損益に直結します。理想的なレイテンシは10ミリ秒(ms)以下とされています。
サーバー設置場所の確認
レイテンシを低く抑える最も効果的な方法は、FXブローカーのサーバー設置場所に地理的に近いVPSを選ぶことです。
多くの海外FX業者は、高性能なデータセンターが集中するロンドン(LD4, LD5など)やニューヨークにサーバーを設置しています。そのため、日本のVPS業者であっても、これらの海外データセンターにサーバーを保有しているプランを選ぶことで、低レイテンシを実現できます。VPS選びの際には、ブローカーとの接続速度(Ping値)を事前に確認できると完璧です。
まとめと推奨スペック
これらの観点をもとに、ご自身のEAの数、取引スタイル(スキャルピングか長期運用か)、そして負荷に応じて最適なVPSを選定し、安定したMT4ライフを実現してください。
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項目 |
優先度 |
推奨スペック(MT4を4つ稼働させる場合) |
考慮すべき点 |
|---|---|---|---|
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稼働率 |
最重要 |
99.99%以上の保証 |
緊急時の日本語サポート体制も要確認。 |
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CPU |
高 |
4コア以上 |
EAの負荷に応じて増減させる(高負荷なら多めに)。 |
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メモリ |
高 |
4GB〜6GB |
OS分の約1.5GBを忘れずに加算し、メモリ不足によるフリーズを防ぐ。 |
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ストレージ |
中 |
SSD必須、総容量30GB〜50GB |
速度が最優先。容量はバックテストデータやログの蓄積を考慮。 |
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レイテンシ |
最重要(スキャルピングの場合) |
10ミリ秒(ms)以下 |
ブローカーのサーバー設置場所に近いVPSを選ぶ。 |
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